合縁奇縁~それでも愛は勝つ

現在、時刻は四時半。

早迎えのお時間だ。

子供達はお昼ね後、おやつを頂いて、自由時間。

保育園全体が、ゆっくりと進んでいる時間帯なのだ。


いつもと違う保育園の雰囲気に、恐る恐る玄関の扉を開けると、目の前に努先生の姿があった。


「あ、天野さん、今日は早迎えの日でしたね」


何でここに努先生が?

と不思議に思ったが、精一杯、いつも通りに振舞おうと身構える。


「はい、今週一週間は特別休暇をとったので、暫くは早迎えです。

雄輝は二階ですか?」

「雄輝ちゃんは、二階のひまわり組でお絵かき中です。

あ、天野さん、ちょっと……」


一歩近づいた、彼の指があたしの口の横をそっとなぞった。


「ち、ちょっと……」

「生クリームついてますよ」


そう言って笑った彼は、生クリームのついた人差し指をそのまま自分の口に躊躇無く運んだのだ。
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