合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「あれ? 美樹さんじゃありませんか?」
「はい?」
確かにあたしの名前は美樹だけど、そう呼ぶ顔に見覚えは無かった。
「僕ですよ、鈴木隆です。
あ、そっか、ほら?」
そう言って、彼は膨らんだ上着のジッパーを少し下ろし、中から白い何かを覗かせた。
「ユメです、こっちは覚えてるでしょ」
――嗚呼……、昨日の犬を連れたイケ面さんか。
「僕の家、直ぐそこなんです、良かったら雨宿りしてって下さい」
彼は大きな傘をあたしに差し掛けると、
「さあ、風邪ひきますよ、今日は寒いから」
そう言って、有無を言わさずあたしの腕を掴んだのだ。