合縁奇縁~それでも愛は勝つ



本当に、彼の家は公園の直ぐ目の前だった。



「遠慮しないで、寛いでください、はい、これタオルとバスローブ」

玄関に立ち尽くすあたしに、彼はタオルとバスローブを手渡した。


あたしは黙って、タオルで濡れた身体を拭いた。

あたしの立っている位置は、それでなくても水溜りが出来るほど大きな水染みが出来ていて、申し訳なくて仕方ない。


こんな格好で、家に上がる訳にはいかないと思った。


「何してるんですか?

ほら、靴脱いで、バスローブ羽織って……」


彼はそう言うと、あたしにバスローブを羽織らせそのまま抱き上げた。


「な、なに……」

「水も滴るいい女、って……

冗談ですよ、バスルームまでお連れします」

「バスって、あたし、そんな、いいですっ」

「こんなびしょ濡れじゃ、僕が困りますよ。

兎に角、乾かしてもらわないと、ね」


――確かに、これじゃ、濡れ雑巾だ……


ここまで付いて来て、この状況で逃げる訳にもいかず、あたしは素直に彼の言葉に従った。
< 189 / 231 >

この作品をシェア

pagetop