合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「天野さん」
そう呼びかけられて、顔を上げ、あたしはその場に固まった。
だって、そこには、思い焦がれた、努先生その人が立っていたから。
これが最悪の事態なのか、はたまた神の授けられたチャンスなのか?
どちらにしても、あたしは取り繕う暇さえ、与えて貰えないようだ。
「園長に聞かれました。
お迎えの時に何かあったのかって。
人伝に聞くよりは、僕から直接話した方がいいかと思いまして。
というより、園長には話辛くて……」
「……」
それは余りに飾らない、ストレートパンチで、あたしは、彼の顔を見つめるだけで、言葉を発することができなかった。