合縁奇縁~それでも愛は勝つ



「幸運を祈る!」



坂本弁護士は、そう言い捨てて帰っていった。


彼の今までと何ら変わらぬ態度に安堵する。

彼はあたしより、ずっと大人で懐が深い。

そう思い知らされた。



努先生とは、良好な関係が続いている。

雄輝が卒園するまでは、一緒に暮らすのは待つと決めて、お互いの家を行ったり来たり。

彼は、両親と住んでいた大きな家に一人住まいで。

三人で押しかけた夜は、次の日帰るのがはばかれるほど引き止められるけど。


いっその事、このまま暮らそうか、とも思うけど。

やはり、そこはそれ、大人の分別が邪魔をするのだ。


それに……


若い彼の薄給で、家族四人が生活できるほど現実は甘くない。

やはり、お互いの自立こそが二人の関係の第一条件で。

だからこそ、あたしは、今目の前に垂らされた運命の糸を、しっかりと掴もうと必死になっている。
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