合縁奇縁~それでも愛は勝つ



「あ、ありがとうございます!!」



あたしは大きく頭を下げ、謝辞を述べた。

と、同時に溢れる涙。


「う、嬉しいです。

ご期待に応えられるよう、倒れるまで頑張ります!」


「いやぁ、そんなに気、張らないで。

いつもの自然体でいってください。

それで十分ですよ」


人事課長一人を残し、後の四人は会議室を後にした。


「では、会社の組織、および人事規定についてお話します……」


目の前に広げられた数々の書類について、一つずつ説明を受けながら、あたしは採用された喜びを噛みしめていた。

細かいことは全く知らずに、木村さんの薦めに従って受けたこの会社。

聞けば驚くことばかりだった。

夫婦別姓を貫くために、社内には実質事実婚の形をとるカップルも数組いるということで、例え未婚の母であろうとも出産休暇と育児休暇は認められるという。

あたしには現実的に関わりは無いが、男性の育児休暇の取得率も二割と高く、社内結婚を選択するカップルが多いという。

なんと言っても社内保育室完備だし、夫婦で子育てしながら仕事を続ける、理想社会を垣間見た気がしたのはあたしだけだろうか。


それもこれも、あの、『男前な女の地位向上を支援する会』の功績?


木村さん夫婦の幸せも、この会社あってこそ。


いや、その幸せを勝ち取る為の『男前な女の地位向上を支援する会』なのかな?
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