合縁奇縁~それでも愛は勝つ
いつしか溢れる涙で、もう何も見えなくなった。
「村井から、両親の話なんて聞いたことありませんでした。
てっきり、もう亡くなったものかと……
そうですか……遺灰はご両親の元へ……
せめて、写真の一枚でもあったら……」
あたしは必死に言葉を繋いだ。
そうしないと、意識を保っていられなかった。
山村さんは、私の心が静まるのを辛抱強くじっと待っていてくれていた。
「ごめんなさい。取り乱してしまって……
村井がいないことなんか、慣れっこのはずなのに、可笑しいですよね。
でも、何年後かにまた会えると思えば待つこともできた。
あたしにとって、村井は、そんな空気のような存在だったんです」