合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「僕も遺書を書きましたが、余命を宣告された訳じゃあない。
財産分与の取り決めとか、子供の将来に関することとか、そんな事務的なことしか思い浮かびませんでしたよ。
兎に角、その弁護士に連絡をとってみて下さい。
それが今わかる、村井君があなたにして欲しいこと、なんですよ」
山村さんは、あたし達親子を気遣いながら帰っていった。
何か困ったことがあったら、いつでも連絡をくれて構わない、そんな優しい言葉を残して。
帰り際、
「こんな写真しか見つからなくて……」
と、申し訳なさそうに、上半身裸でジープを洗う日焼けした太一の写真を渡してくれた。
「僕の中の村井君のイメージって、こんなんです。いつもこんな風に笑ってます」
写真の太一は、白い歯を見せ、輝くばかりに笑っていた。