合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「何か?」
「何かって、そりゃ孫の雄太のことに決まってるでしょ」
目眩がしそうだった。
「わたしと太一さんは結婚もしていませんし、雄太が太一さんの子かどうかなんて証明できるものはないんですよ」
「見ればわかりますよ。雄太は太一にそっくりです。間違いなく太一の子です」
「だから?」
「だからって……決まってるでしょ、太一の子をこんなあばら家に置いておくわけには参りません。
引き取って、然るべき環境で然るべき教育を受けさせます」
彼女は恐らく、この言葉を言うために毎日ここへ通い続けていたのだろう。
あたしが出勤して無人になった、このボロアパートに。