合縁奇縁~それでも愛は勝つ
あの時あたしは悟ったんだ。
太一があたしを籍に入れようとしなかった訳を。
太一があたしに家族の話をしなかった訳を。
それからも太一の母の訪問は続いて、あたしは耐え切れなくなってアパートを逃げ出した。
駅の近くのウィークリーマンション。
当座の荷物だけ持って雄太と二人、隠れるように夜逃げした。
こうなると、あたしが会社へ行っている間の雄太が心配だった。
もしかしたら、無理矢理連れ去られてしまうんじゃないか。
母子家庭で身寄りのないあたしの立場は弱いんじゃないか。
あたしは、ちょっとした影にも怯えて暮らしていた。
「雄太、兎に角暫くの間は、学校が終わったらすぐここに帰って大人しくしてること。
テレビ観てもゲームしても何でもいいよ。兎に角、外には出ないで」
「えぇ~」
遊びたい盛りの雄太が、そんなあたしの言いつけを守れる訳なかったよね。