合縁奇縁~それでも愛は勝つ
アパートに戻ってみたけれど、
そこに雄太の姿はなくて、
あたしは半狂乱で叫んでいた。
「ゆ、雄太を返してっ!」
あの時のあたしは、常軌を逸していたのかも。
立ち向かう先もわからずに、刃物を振り回すようなマネをして。
恥ずかしい……
「天野くん、落ち着いて。
まだ雄太くんが連れ去られたと決まった訳じゃない。
先ず、今、君たちがいる場所に案内してくれたまえ」
泣き崩れるあたしを抱きかかえるようにして、課長はそう言った。
確かに、冷静に考えれば、雄太はマンションにもう戻っているかもしれなかった。