合縁奇縁~それでも愛は勝つ


「天野くん、君はその亡くなった太一くんから、子供のことで何か言われてないのかい?」


頭上から、落ち着いた声が降ってきた。


「養育費のことで、弁護士に会うように言われてます」

「それだよ!

彼はきっと、その弁護士に何かを託している筈だ」

「な、なんで、そんなことがわかるんですか?」

「僕だったら、そうするからだよ」

「課長だったら?」

「はっきり事情が呑み込めたわけじゃないが……

天野くん、この雄太くんは太一くんという君のパートナーの忘れ形見、と理解していいかな。

何らかの事情で、君は太一くんを失った。

だが、彼の母親が、雄太くんを太一くんの変わりに求めている」

「そ、そうです」

「君と太一くんの間に婚姻関係は?」

「あ、ありません」

「雄太くんが何故太一くんの子供だとわかったのかな?」

「そ、それは、多分……太一が雄太を認知していたからです」

「成る程……だが、君は一人で雄太くんを育てていた」

「はい。太一は三年に一度、雄太に会いに戻って来ました」

「三年に一度?」

「太一は戦場カメラマンだったんです」

「成る程……

彼は俗世をここに置いていったというわけか……」



藤沢課長はそう呟くと、あたしと雄太を優しい瞳で見つめていた。
< 40 / 231 >

この作品をシェア

pagetop