合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「天野くん、君はその亡くなった太一くんから、子供のことで何か言われてないのかい?」
頭上から、落ち着いた声が降ってきた。
「養育費のことで、弁護士に会うように言われてます」
「それだよ!
彼はきっと、その弁護士に何かを託している筈だ」
「な、なんで、そんなことがわかるんですか?」
「僕だったら、そうするからだよ」
「課長だったら?」
「はっきり事情が呑み込めたわけじゃないが……
天野くん、この雄太くんは太一くんという君のパートナーの忘れ形見、と理解していいかな。
何らかの事情で、君は太一くんを失った。
だが、彼の母親が、雄太くんを太一くんの変わりに求めている」
「そ、そうです」
「君と太一くんの間に婚姻関係は?」
「あ、ありません」
「雄太くんが何故太一くんの子供だとわかったのかな?」
「そ、それは、多分……太一が雄太を認知していたからです」
「成る程……だが、君は一人で雄太くんを育てていた」
「はい。太一は三年に一度、雄太に会いに戻って来ました」
「三年に一度?」
「太一は戦場カメラマンだったんです」
「成る程……
彼は俗世をここに置いていったというわけか……」
藤沢課長はそう呟くと、あたしと雄太を優しい瞳で見つめていた。