合縁奇縁~それでも愛は勝つ
翌日、藤沢課長は太一が依頼していた坂本弁護士に連絡をとってくれた。
課長が予想していた通り、坂本弁護士は雄太の養育費の件だけではなく、太一の実家と何か揉め事が起こった時を想定してその弁護を依頼されていた。
「僕は、太一くんとは高校時代の同級生なんです。
彼の家は江戸時代から代々続く米問屋で、地元の名家でした。
そりゃ厳格に育てられたみたいですよ、中学まではね。
その反動か、高校時代の彼は、もう全てが滅茶苦茶でした。
恐らく全てを壊しにかかっていたんでしょう」
「そんなの……信じられません。
だって太一は、そりゃ、戦場カメラマンになるって位ですから人一倍正義感は強かったんだと思います。
でも、とても穏やかな人でした」
「そうだな……
親の反対を押し切って、半ば勘当されるように東京の大学へ進んで、あの頃の彼は、つき物が落ちたように穏やかだった。
それは……きっと、あなたと出会ったからかもしれませんね」
坂本さんは、そんなおかしなことを言って悲しそうに笑った。
「彼が亡くなったなんて、ほんと、今でも信じられませんよ」