合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「藤沢課長のお陰です」
あたしは改めて、課長に深々と頭を下げた。
「いや、僕は、太一くんが命と引き換えにしても守りたかった彼の宝物に魅せられただけだよ」
「えっ?」
あたしは課長の言葉の意味がわからなかった。
「天野くんは、案外鈍感だね」
そのまま身体を引き寄せられた。
抗う術を、その時のあたしは持たなかった。
男の温もりが恋しかったのだ。
課長の優しさと強さにも惹かれていた。
案外あたしは惚れやすい。
彼に妻子がいるのも、会社の上司だということも、全てを知った上で、あたしは彼に抱かれた。
もう後戻りはできなかった。