合縁奇縁~それでも愛は勝つ
雄太には、一応言い聞かせてあったのだが、何せまだ十歳そこそこの子供だ。
夜中に目覚めたことで寝ぼけていて、雄輝が泣き止まないことでパニックに陥ったらしい。
アパートの廊下に雄輝を抱いて出た雄太が、母を求めて泣き叫んだのだ。
近所を巻き込んで、ちょっとした、警察騒ぎになってしまった。
児童虐待も疑われて、児童相談所まで出てくる始末。
あたしは頭を抱えこんだ。
「なんで、そういう時、僕のことがすぐ頭に浮かばないかな」
「だって、あたしも慌ててて……」
警察で簡単な取調べを受け、弁護士の有無を聞かれて思い出した。
坂本一郎、彼の名を。