合縁奇縁~それでも愛は勝つ



「さっさとしろ、この女がどうなっても知らんぞ」



男の意識がレジに向けられた隙をついて、あたしは身を屈めてナイフの矛先から身を外し、すかさず男の股座に鉄拳を叩き込んだ。

声も無く身を崩す男の手から、今度はナイフを叩き落とす。

手首を掴んで後ろ手にヒネリ上げた。



「田中くん、そこのレジ下にある荷捌き紐とって」



呆気に取られた田中くんは、あたしの具体的な指示に素直に従った。


白いナイロン紐で男の両腕を後ろ手に縛り上げ、あたしはレジ下の警報ボタンを押した。






「あ、天野さん……お見事です」


田中くんは、目をパチパチと瞬かせ、やっと現実に引き戻されたのか、一言そう言葉を発してへたりこんだ。
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