合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「じゃ、雄輝ちゃん、お預かりしましょう」
千鶴子先生はあたしの背中から雄輝を降ろし、まだ眠っている雄輝を抱き上げた。
「今日は初日なので、昼食は食べずにおきましょうね。
十一時半頃、お迎えにこれますか?」
「は、はい」
「明日は、昼食後お昼寝前まで。
慣れるのが早そうなら、次の日はお昼寝まで。
天野さん、出社予定は週明けでしたか?」
「は、はい」
「上手く行けば、金曜には六時までお預かりできるようになりますよ。
それには体調管理が大事です。早寝早起きを心がけて、一日が気持ち良く過ごせるようにしてあげて下さいね」
「は、はい」
「じゃ、十一時半に」
千鶴子先生はそう言うと、雄輝を抱いて園児室へ戻っていった。
「あっさりし過ぎなようだけど、この方がいいの。泣かれたら嫌でしょ」
園長先生が呆気にとられたあたしを優しく見つめていた。
「誰だって、自分の子と別れるのはつらいもの。
できることなら、自分の手で育てたい。
先生達もそんな母親の気持ちが良くわかるのよ、自分自身が経験したことですからね」
不安を抱えたあたし達親子に射した一筋の光。
この日から、雄輝とあたしの保育園生活が始まったのだ。