合縁奇縁~それでも愛は勝つ
「昨日はたいへんだったようね」
次の朝、登園すると玄関で園長先生に声をかけられた。
「努先生はとっても熱心だけど、融通が利かないとこがあるの。
まぁ、男性ってことも大きいんですけどね。
まだ若いし、言ってることは正しいの。
あんまり深く考えずに流してあげてね」
「いえ、考えが足りなかったのは私の方です。ご迷惑おかけしました。以後気をつけます」
きっとあたしの表情は硬かった。
「天野さん、ほら見てご覧なさい」
園長先生に促された先には、園庭で子ども達と遊ぶ努先生の姿があった。
「お二階の年長組では、努先生は絶対の人気なの。
見て、あの無邪気な笑い顔。
どっちが子どもか分からないわね」
昨日の強面とは、別人のような笑顔。
少しだけ太一に似ていると思った。
それが、村瀬努(ムラセツトム)、通称つとむ先生との出会いだった。