in the dark†短編†
「なあ、助けてやったんだからさ。御礼してよ」

意地悪な笑いを浮かべて、不意にシュウが顔を近づけた。

悪い予感がして、私はじりじりと後ずさった。

「お、御礼って?」

聞き返すと、彼はとんとんと、自分の形良い唇を指差した。

「キス」

「きっ! ヤダ!! む、無理だよそんなの」

真っ赤になって首を振る。
シュウは弾かれたように爆笑した。

「冗談だよ。いいねえ処女は。反応がうぶくて」

「しっ処女とか言わないでっ」
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