in the dark†短編†
ナースステーションの横を通り、

病棟から出るガラスの扉へ向かった。

病棟の一番手前の

特別室の前を過ぎ

私は足を止めて、振り返った。

透明プレートに差し込まれた患者名は

―――片瀬、シュウ


ドクンと心臓が鳴った。

「ミツキちゃん、どうかした?」

通り掛かった、看護婦さんに呼び掛けられ顔を向ける。

「――あの、この病室の人」

指をさすと、看護婦さんは少し顔を曇らせた。

「片瀬さん?」

「高校生か大学生くらいの男の子ですか?」

尋ねると彼女は驚いたような顔をした。

「あら?知り合い?」

「は、はい」

半分嘘で半分嘘じゃない。

彼が

シュウなら。
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