in the dark†短編†
「暢気に寝てんじゃねーよ。大概に起きやがれ」

初めて会った時の、シュウの台詞を真似てみる。

重い瞼は、閉じたままで反応はなかった。

私は管に触れないよう、細心の注意を払って顔を寄せ、頬にそっとキスをした。

「お礼、したからね」

身体を起こし、松葉杖をついて歩き出す。

二、三歩進んで、なぜか胸騒ぎがして、振り返った。

「………」

シュウの瞼が震える。

息を飲む私の前で、彼の瞳がうっすらと開いた。
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