ヴァンパイアと秘め事を
「身体は大丈夫?」
アレンが言った。
まだワインの入ったグラスをゆらゆらとしてる。
“大丈夫”以外に言える言葉はないと思った。
あたしはアレンの空いている手に、そっと自分の手を重ねてみた。
「うん。……大丈夫」
「それはよかった」
離すわけでもなく、それに応えるわけでもなく、アレンはチラリと一瞥をくれただけ。
長い沈黙が流れる。
「千紗は…」
何分か、何十分かの沈黙を破ったのはアレンだった。