いつか、桜の下で…
―…一週間後。
新撰組は、新しく入って来た隊士を鍛えるのに力を注ぎ始めた。
「爪が甘いっ!」
日が暮れかかって、少し赤みが増してきた道場で竹刀のぶつかり合う音と、斎藤の声が響く。
稽古は今朝早くから始まり、斎藤は、隊士全員と休むことなく竹刀を交じり合わせている。
そして、斎藤と同じく、香織も休むことなく負傷する隊士達の傷の手当てをしていた。
「香織さんもお忙しいようですね…」
道場の入り口に立っている俺の横に山南さんが立った。
「そうみてぇだな」
道場を見続けながら、俺は軽く返事をする。
「全く…土方くんは変わりませんね…」
山南さんは、呆れながらそう言った。
「貴方も私と同じ事を思っているというのに…」
山南さんは、俺の考えていることを見透かした風な口調をしていた。
出会ってから、今まで。
山南さんは、一度として俺に嘘をついたことがない。
だとすれば、俺が今一番考えていたことが、願うことが。
山南さんには、本当に見透かされていた―……。