いつか、桜の下で…
参
パキッ
枝が割れる音がして、利人は、音のなるほうを振り向く。
見えたのは、陽菜の姿。
けれど、おかしいとも思った。
雰囲気がどこか凛としていて、誰かによく似ている。
彼女は、にこりと微笑んだ。
「かお、り…?」
間違えたら…と思って、利人は恐る恐る聞いた。
そして、ゆっくりと彼女の首は、縦に動く。
「貴方に、伝えたいことがあるの」
声も姿も利人がよく知っている陽菜のものだった。
だけど、今目の前にいるのは『香織』。
利人に伝える為だけに彼女は、この時代にいる。
また、会える日がきた。
利人の中にいる『藤堂平助』は、それを知ってから、早く会いたいと。話したいと。
利人に願っていた。
利人も、平助と今まで一緒にいたからこそ、平助の思いを叶えてあげようと、平助に体を貸した。