いつか、桜の下で…




パキッ



枝が割れる音がして、利人は、音のなるほうを振り向く。



見えたのは、陽菜の姿。



けれど、おかしいとも思った。


雰囲気がどこか凛としていて、誰かによく似ている。




彼女は、にこりと微笑んだ。



「かお、り…?」



間違えたら…と思って、利人は恐る恐る聞いた。



そして、ゆっくりと彼女の首は、縦に動く。



「貴方に、伝えたいことがあるの」



声も姿も利人がよく知っている陽菜のものだった。



だけど、今目の前にいるのは『香織』。



利人に伝える為だけに彼女は、この時代にいる。




また、会える日がきた。


利人の中にいる『藤堂平助』は、それを知ってから、早く会いたいと。話したいと。


利人に願っていた。


利人も、平助と今まで一緒にいたからこそ、平助の思いを叶えてあげようと、平助に体を貸した。
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