いつか、桜の下で…
「香織。これを伝えたかったの?」
平助の問いに香織は、首を横に振る。
「もう一つだけ、あるの。あなたに伝えようとしてたこと」
香織は、深く息を吸う。
それを平助は黙って見ていた。
「あなたの為に作った歌」
平助の表情が驚きに変わった。
二人を遠くで見ていた三浦は、そのことをもうすでに知っているようだった。
だから、三浦はその場を離れていく。
二人の中に、自分は入っていけないとわかっていたから。
ただ、自分が好きになった陽菜だけは、利人に取られたくない。
矛盾した想いが三浦の心にうごめいていた。