いつか、桜の下で…



陽菜の姿が見えなくなるまで、利人は走った。


よかった…


陽菜に、今の俺の顔を見られなくて。


抱きしめることくらい簡単に出来る。そこから、その手を離すか離さないかは、別の問題。


でも、俺が手を離したのは、陽菜に言ったように虐め。…それから、俺の気持ちに区切りをつけるんだ。


何もしないで、三浦に奪われるのは嫌だからな。


どうせなら、あーゆうことをしてもいいだろう?


…最後だからな。


「あーあ!」


俺は、空を見上げた。


桜が雨のように降ってんのに、空は明るく、綺麗だ。



「…俺は、好きだったんだぜ…記憶なんかがなくても、俺は…」


絶対に届かない。

でも、言葉にしないと気が済まない。


それほどまでに、お前が好きだった。


この桜みたいに、この想いなんか、簡単に落ちて、消えてしまえばいい。


いや、消して見せる。


俺は、お前達の友達だ。


…それでいい。



< 135 / 162 >

この作品をシェア

pagetop