いつか、桜の下で…
陽菜の姿が見えなくなるまで、利人は走った。
よかった…
陽菜に、今の俺の顔を見られなくて。
抱きしめることくらい簡単に出来る。そこから、その手を離すか離さないかは、別の問題。
でも、俺が手を離したのは、陽菜に言ったように虐め。…それから、俺の気持ちに区切りをつけるんだ。
何もしないで、三浦に奪われるのは嫌だからな。
どうせなら、あーゆうことをしてもいいだろう?
…最後だからな。
「あーあ!」
俺は、空を見上げた。
桜が雨のように降ってんのに、空は明るく、綺麗だ。
「…俺は、好きだったんだぜ…記憶なんかがなくても、俺は…」
絶対に届かない。
でも、言葉にしないと気が済まない。
それほどまでに、お前が好きだった。
この桜みたいに、この想いなんか、簡単に落ちて、消えてしまえばいい。
いや、消して見せる。
俺は、お前達の友達だ。
…それでいい。