いつか、桜の下で…
「社長。会議の資料出来上がりました」
「…そこに置いておけ」
「わかりました」
健一がキーボードを打つ音が広い部屋に響く。
「しゃ…」
「……なんだ?」
「…あ、いえ…」
最近、休みを取らずに仕事をし続けていた健一を心配して、声をかけようとした。
彼女は、水上菜緒。
健一の秘書として、二年前から働いている。
「頼まれていた例の件ですが、業者側の都合で少し遅れて出来上がるそうです」
「そうか。わかった。
その他に問題はないな?」
「はい」
「お前も仕事に戻っておけ」
「はい。……では、失礼します」
そして、菜緒は部屋を出た。