いつか、桜の下で…

けど、今は言えない。
言ったら、自分が死にたくなくて、戦いに気を抜いてしまうんじゃないか不安で言えない。

だから、今は。

「なんてな、冗談だって」

…嘘で終わらせよう。

「…そっか、嘘だよね」

そして、平和になった時に「そうだったんだ」って笑って言えたらいい。

「…って、起きてんのちょい、きついから俺寝るな?」

「…あ、うん!
早く元気になってね」

平助には、香織が苦しそうな顔を堪えながら、無理に笑顔を作っていることがわかった。
それは、彼女の願いも平助と同じだからこそ。

けど、言えなかった。

言えないまま…。

香織が殺されたと一報が入った。


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