いつか、桜の下で…


俺は、いつも見てるだけだった。
幸村さんが苦しんでも、なにがあっても。

本気になったら、自分が苦しむことを知っていたから。


沖田総司の人生の全てを、知ったから。

沖田総司は、本気で戦って、生きて、人を好きになって、一人で死んでいった。


…そう、なりたくなかったんだ。


だから、吉岡利人が幸村さんを好きになろうとどうでも、見ているだけにした。


それなのに、二人が一緒に居るところを見ると、いらついて仕方がなかった。


それが、“嫉妬なんだ”と気付いたとき、俺は、幸村さんをどうしようもなく、好きになっていた。





『全く…君は、土方さん並に強情だよね』


沖田総司が俺に話し掛けてくる。



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