いつか、桜の下で…



お兄ちゃんの仇を伐ちたい。

のに、壬生浪士組の人達と一緒に居たい。


そう考える気持ちがぶつかって、夜になると毎日のように大粒の涙を流していた。


どんなに、皆に剣技を教えたって、私は強くない。

…そう、思い知らされたよう。


「お兄ちゃ……っ」


もう一度、会いたいよ。


会って、会って、会って…


そして、もう一度優しく抱き留めてほしい。


私は、一人なんだよ…?


「………香織?」



柱の影から、誰かが私の名前を呼んでいる。


「…泣いているのか?」


泣いていないと、首を振って否定すると、沈黙が続いた。

多分、柱の影に居るのは、平助君なんだろう…。

そんな気がする。


「俺さ、たまに思うんだ。何で、俺達刀持ってんだろって。…だってさ、俺達おんなじ人間何だし、口で解決出来んじゃん?」


「…解決出来ないから、刀があるの…」


「それって、悲しくね?」


悲しいよ…でも、世の中そんなに甘くないの…。


刀さえ無ければ、お兄ちゃん達は死ななかったかもしれない。


刀さえ持たなければ、誰も傷付かない。


「俺、刀がない世界に行きたい」


「……え?」


「…なんてな!あ、でも憧れね?刀無かったら、誰も死なないんだぜ」


幕府派の人間に、こうゆう人もいるなんて…もしかしたら、幕府派が悪い訳じゃないのかも。


「ねぇ…近藤さんたちも、そう思ってるの?」


「近藤さん?あったりまえじゃんか!だから、俺達は近藤さんについて来たんだ。…最初から、戦いを好む奴なんて、ここには居ないからさ」


…そっか、近藤さんは、壬生浪士組の皆は…。


刀を無くす、それが本当に出来るなら、私は、彼等についていく。




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