いつか、桜の下で…
参
「じゃあね、幸村さん」
夕日が暮れている中、陽菜は爽に家まで送られていた。
「うん。今日はホントにありがと」
照れくさそうに爽は頷いて、後ろを向き、陽菜から離れて行った。
「それと、何かあったら俺を頼っていいからね♪」
そして、思い出したかのように陽菜の方を振り向いて、笑顔でそういった。
「でも、今日会ったばっかりだし、気持ちだけ受けとっておくね?」
離れている分、陽菜は、いつもより大きな声を張り上げた。
大声を出すことに慣れていない陽菜の喉は、今の短い言葉だけでも痛んだ。
それに気付いたのか、爽は陽菜に近付いてくる。
「君にはそうかも知れないね」
「……?」
近付いてきた、爽の顔はどこか、寂しそうだった。
「ん、あぁ…いや!何でもないよ」
爽は、眉間にしわを寄せて、ひきつった笑みで陽菜にそう言う。
そんな爽を見て、何かが引っかかる感覚が陽菜を襲ったが、その先は聞いちゃいけない気がした。
「ともかく、俺に気ぃ使わないでいいから!」
「…でも…」
「ねっ!」
「…うぅ……………」
結局、爽の気迫に負けた陽菜は、毎日、爽に家まで送られることになった。