いつか、桜の下で…



「じゃあね、幸村さん」


夕日が暮れている中、陽菜は爽に家まで送られていた。


「うん。今日はホントにありがと」


照れくさそうに爽は頷いて、後ろを向き、陽菜から離れて行った。


「それと、何かあったら俺を頼っていいからね♪」


そして、思い出したかのように陽菜の方を振り向いて、笑顔でそういった。


「でも、今日会ったばっかりだし、気持ちだけ受けとっておくね?」


離れている分、陽菜は、いつもより大きな声を張り上げた。


大声を出すことに慣れていない陽菜の喉は、今の短い言葉だけでも痛んだ。


それに気付いたのか、爽は陽菜に近付いてくる。


「君にはそうかも知れないね」


「……?」


近付いてきた、爽の顔はどこか、寂しそうだった。


「ん、あぁ…いや!何でもないよ」


爽は、眉間にしわを寄せて、ひきつった笑みで陽菜にそう言う。


そんな爽を見て、何かが引っかかる感覚が陽菜を襲ったが、その先は聞いちゃいけない気がした。


「ともかく、俺に気ぃ使わないでいいから!」


「…でも…」


「ねっ!」


「…うぅ……………」




結局、爽の気迫に負けた陽菜は、毎日、爽に家まで送られることになった。

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