いつか、桜の下で…


………………


「これでいいの?」



三浦君は、不安気に私を見ている。



「うん。久美から頼まれたのはこれだけだから」



私の手の平には、縁結びのお守りが一つあるだけ。



まぁ…流石にこのためだけに京都っていうのも不自然かも。



私は、苦笑しながらお守りをバックの中に入れる。



「…じゃあ、次は俺だね」



そう言った三浦君の表情は歪んでいて……苦しそう。



額からは、汗が流れていた。



「大丈夫?」



「平気。行こう」



三浦君は、そう言って微笑む。



ここ数日の間…私は、三浦君について、少しだけ知れた気がする。



三浦君は、確かに優しい。



だけど、その優しさは、絶対に自分自身には向けない。



どんなに自分が辛くたって、三浦君は笑う。



………いつも。


悲しい表情で笑うってことを。




私は、知っている。




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