いつか、桜の下で…
『また、会えた……』
香織さんの悲しい声が痛いほど伝わって。
私は、いつの間にか大粒の涙を流していた。
「大丈夫?幸村さん」
私の異変に誰よりも早く気付いたのは、三浦君だった。
「私は大丈夫」
「…それならいいんだけど」
香織さんは、この人達が大好きなんだ。
私は、少しだけなら、香織さんに身体を貸そうって、思った。
だけど、どんなに頑張ってみたところで香織さんは、私の中にしか存在しない。
目の前にいたって、香織さんの手は、あの人達には届かない。
それが私には、何よりもはがゆかった。
「………………香織…」
私が眉間にシワを寄せているとき、あの中の誰かが香織さんを小さな…でも、力強く呼び止める。
その一瞬だけ。
私の心臓は、ドクンと大きく跳ねる。
多分、その声は香織さんの大切な人の声。