いつか、桜の下で…
「…全員?」
私が呟いたその声は、皆に聴こえていたみたいで、視線が全部私に集中する。
「そうだよ。香織君、君が揃っていなかったからね」
視線の中で、誰よりも優しい眼差しで私を見つめる近藤さんがいた。
「始まりの日」
無意識に私は、そう言っていた。
―私達、全員が始めて出会った日。
共に、幕府に使えようと。
誓い合った始まりの日。
それが、2月27日―
…香織さんは、女の人でありながら、浪士組に入った。
そこでみんなに会った。
………それは、はっきり覚えてる。
それからの事は、よくわからないけど。
「幸村さん」
耳元で囁かれ、私の肩はビクリと揺れた。
「驚かなくていい、俺だから」
「あ、三浦君…」
三浦君は、私を気遣ってくれているのかいつものように話し掛けてくれた。
他の人が『香織さん』と私を呼ぶ中で、三浦君だけが私を普通に呼んでくれてる。
それが今、私が『幸村陽菜』だと確信させる唯一のものになっていた。