いつか、桜の下で…
…ちぎりびと。
壱
京都から、帰って二週間が経った。
私は、変わらず久美と笑い合って、何気ない毎日を過ごしていた。
ただ、変わったことは一つだけ。
私と久美だけだった昼食が二人増えたっていうこと。
一人は、三浦君でもう一人は、『吉岡利人(リヒト)』君。
利人君は、図書館の時に三浦君の名前を呼んだ男の子で、なおかつ、京都で近藤さん達と一緒にいた人。
「陽菜、どうした?」
「え?」
「ぼーっとしてたぜ?」
「あ、ごめん。利人君」
利人君は、そんな私を見て「珍し」と無邪気に笑っている。
私は、自分の目の前にあるお弁当に視線を落とし、卵焼きを口にした。
…甘い。
今日の卵焼きは、一段と甘く出来ていた。
「やっぱり、大勢で食べるのは楽しいねっ!!」
子供のようにはしゃぐ久美。
そんな久美と同じ匂いを感じさせる利人君。
私は、そんな二人を見ている方が楽しいって、思いクスクスと笑っていた。
そして、ふと、三浦君を見ると。
三浦君は、怒っているような表情を見せていた。
「三浦君?」