いつか、桜の下で…
私がそう呼ぶと。
三浦君の眉間には、より濃いシワが出来た。
どうしたんだろう…?
いつもの三浦君らしくない。
久美と利人君のはしゃぎ声が聴こえる中、私は、目を合わせてくれない三浦君を見ていた。
「な、今日カラオケ行こうぜ!」
利人君は、変わらず無邪気に笑って、そう言う。
「賛成っ!!!」
真っ先に手を上げたのは、言うまでもなく、久美だった。
「陽菜も行こうよー!」
「あ、うん。…三浦君は?」
恐る恐るそう聞いてみると、
「…ストレス発散したいし、行く」
あっさり、そう答えてくれた。
「じゃあ、放課後迎えに来るからっ」
利人君と三浦君は、自分の教室に戻って行った。
「ねぇ、陽菜ってさ」
二人の姿が見えなくなると久美は、黒い笑みで私を見ている。
「なに?」
「三浦君の事、好きでしょ」
久美は、周りに気をつかっているのか小声でそう聞く。
「………え?」
今日の私は、反応が遅いのか久美に聞かれてから、暫くしても状況が飲み込めてない。
「だって、ずっと三浦君のこと見てるんだもん」
それは、三浦君の様子が変だったから。
「…あれ?もしかして、気付いてないの?」
すごく驚いた表情を見せる久美。
私としては、久美の表情を見ている方が驚くんだけど…。
「…三浦君も可哀相にね」
久美は、呆れたようにぼそりと呟いた。
「なんで?」
その言葉を言ったと同時に深いため息が聴こえた。
「陽菜は、ホントに鈍いよね…」