いつか、桜の下で…
弐
「あー…喉いてぇ」
カラオケ店から出ると真っ先に利人君は、そう言う。
「飴、いる?」
私は、部屋に置いてあった飴を利人君に渡し、
利人君は、「ありがとっ」と凄く嬉しそうに飴を口の中に入れる。
「陽菜。私、もう帰るねっ」
携帯を閉じる久美。
「わかった。また明日ね!」
久美に軽く手を振り、私も帰ろうと思った時。
「送る」
かなり疲れた顔をしている三浦君がそう言った。
「今日はいいよ。三浦君、疲れたでしょ?」
「あー、じゃあ。俺が送ろっか?」
利人君は、飴を口の中で転がしながら、そう答える。
「いや。いい。俺が送るから」
怒っているのか三浦君は、私の手を強く引っ張っていく。
「み、三浦君っ?」
びっくりしすぎて、私は利人君に「バイバイ」とすら言えなかった。
最近の三浦君は、ホントにどうしたんだろう?
私達の姿が遠ざかっていくまで、利人君は、ただ、苦笑をして、私達を見ていた。