いつか、桜の下で…
「み、三浦君っ」
三浦君に引っ張られている手に、痛みが感じられる。
それは、三浦君が早足で歩いているから、余計に。
「三浦君、痛いよっ」
その言葉で我にかえったのか、三浦君は、急に止まり出し。
「ごめん」
掴んでいた手を心配しながら、謝ってくれた。
三浦君の手が離れたところは、赤くはれている。
「本当にごめん……怖かった?」
私を心配している三浦君は、私がよく知っている三浦君で。
私は、三浦君とは裏腹に笑っていた。
「ううん。怖くなかったよ」
「………よかった…」
三浦君は、安心した顔で私を見る。
かぁぁ………
自分でも顔が赤くなるのがよくわかるくらい、私の頬は熱い。
『三浦君のこと、好きでしょ』
久美の言葉が、私の頭に蘇った。
あの時、否定したのに…。
今の私には。
浅葱色の背中の人よりも
目の前で、優しい微笑みを見せる男の人が。
愛しいと思った――――…。