いつか、桜の下で…
参
「……利人」
険しい表情のまま、爽は陽菜を抱えている。
「三浦。タイムリミットだな」
苦笑する利人の言葉に動揺してか、陽菜を抱える爽の手に力が入っていく。
「…そんなのわかってる」
ドクン………………
ドクン………………
二人の会話が進んでいくにつれて、陽菜の鼓動が大きくなっていった。
「香織が目を覚ますまで、三浦が守るって約束だったし」
「………そうだな」
香織が目を覚ますまで…?
「じゃあな、藤堂」
ドクンッ………
『へい………すけ……』
藤堂の名前が出た途端、香織の自我が大きくなる。
陽菜の魂が体から離れていく。
そんなことを思ってしまうほど、ドクン、ドクンと音をたてて、その時を待ち侘びていた。