いつか、桜の下で…
「土方さんっ?!!!!!」
びっくりしたのは、私も利人君も同じだった。
土方さんは、そんな私たちを楽しそうな目で見て、
「なんだ、てめぇ等。よかったじゃねぇか」
そう言った。
なにが『よかった』なのかわからない私は、利人君を見る。
だけど、利人君は、私を見るとすぐに視線をそらした。
「土方さん」
利人君がその先に言いたいことを察知したのか土方さんは、悔しい顔をしながら、利人君の頭に手を置いた。
「知らねぇままって言うのが、どんだけ辛いのか、俺達が一番よく知ってんじゃねぇか」
「けど、土方さんっ!!!!!」
「だから、お前等はガキだっつーの…」
土方さんの、その冷たい声が利人君を黙らせる。
私は、ただ。
自分が踏み入れちゃ、いけないって気がした。
そしたら、土方さんが私の近くに来て。
「香織の事。知りたいなら、俺と一緒に来い」
「…え…?」
「今すぐじゃなくていい」
土方さんは、ポケットから、一枚の紙を渡してくれた。
名刺だった。
真ん中に大きく書かれているのは、
『草木 健一』
という名前と………
「社、長…」
その人の地位。
「あ、そうだ。草木健一は、俺の名前だからな」