いつか、桜の下で…
「よろしくお願いします」
女は、それなりに剣道の心得を知ってるみてぇだった。
「女の子だから、手加減とかって―――…」
「しないでください」
俺が言うまでもなく、女の方から答えを出す。
なかなかの覚悟じゃねぇか。
俺が関心している間にも沖田の監督の下、試合は始まった。
試合開始の合図と共に、平助は女の脇腹目掛けて、素早く木刀を奮う。
終わったな。
そう思うには、まだ早かった。
平助の構えに気付いた女は、平助が行動する直前。
ほんの数秒の隙間に避けていた。
そして、自分の木刀になにも当たらなかった事に違和感を感じ、平助が戸惑った隙に女は、
平助の後ろに廻った。
「…一本、ですね」
平助の頬には、一筋の汗。
首もとには、女の持つ木刀があった。
これが本当の戦いならば、平助は、死んでいるだろう。
流石の俺も、こんなに早く、終わるとは思っていなかった。
最も、この勝敗を決めた女の動きに気付けていたのは、後の新撰組隊長等だけ。
それほどまでに女の動きに迷いも、隙もなく、素早い動きだったってことだ。