魔王に捧げる物語
「魔王、この世界は手遅れか?」
青年が言うと、魔王はわからん、という様子で両手をあげる。
『次の魔王次第だな、この身にはもう世界を潤す力がない』
その言葉に絶望した。
力が眠る禁断の地。
だからこそ、命を捨てる覚悟でここまで来たというのに……。
期待が大きかったにしても、その力があれば世界を再生出来ると思っていた。
最後の希望が潰える。
言葉を失う青年に、魔王が語りかけた。
『この世界は美しかったか?』
「かつてはな……」
『人や獣、竜が戦によってそれを壊した』
「…………ああ」
『災禍はそれらを粛清する為にもたらされた罰の一つ、罪に気付かせる最期の手段』
その通りなのかもしれない。
だが、甘んじ破滅を受け入れなければならないのか?
何か手はないのか?
必死に考える青年を魔王が静かに見つめる。