魔王に捧げる物語
「……どうしたの?」
「ま、魔王様が……っ!!」
「ニル様!!?」
動揺を隠せない様子の二人にミラはポカンとする。
三人の視線が集中してもニルの反応は薄い。
「……何?」
「わたくし、一度も何かを口にされるお姿を見た事などありませんよっっ!!」
「こ、光栄です……っ!」
キャッキャと賑わう二人に冷めた視線が向けられ、キツイ言葉が飛ぶ。
「栄養は必要ないからね………騒がないでくれない?不快だ」
そのたった一言で、部屋の温度が氷点下になった気がした………。
―――結局。
怪しいキノコは美味しく頂き、数々の珍事件はあったものの。
二人が出ていった後のニルはそう機嫌も悪くなく、食べていたのは一人だったが楽しかった。
不思議な者たちと過ごすのも悪いものではなく、驚きの連続だが、ミラは確実に変わる自分に少しだけ気がついた。