魔王に捧げる物語
「ミラ」


煌々と光る瞳に見透かすように見つめられ、ビクりとしたミラが枕を掴む。


「魔王は本来“夢”は見ない」


「え………?」


意味が更にわからなくなる。
戸惑う彼女に、無表情になったニルが続けた。


「夢という表現は、事象をわかりやすくするために使った言葉。


ねえ?


ミラは、俺の事が知りたい?」



中途半端な所でそう言われても、気になってしょうがない。


夢を見ると言ったのに、違うという。

彼の真意がわからない。

知りたい気持ちはある、でも違和感を感じてからは尚更。



聞かなければ良かったと後悔するだろうか?


それでも、


「知りたいよ……」


聞いてしまったのは自分だから。



見つめたニルは意地悪く笑った。



「いいよ、続きを教えてあげる」



その言葉に体が冷えたのは、気のせいではなかったと思う。





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