魔王に捧げる物語
「魔王は男の姿を借りて現れた。

違うのは、金緑の瞳と何対もある翼だけ」



え?



ミラは目の前のニルを見て思考が停止した。

金緑の瞳も、何対もの翼も………彼の姿そのものではないかと思ったからだ。


意味深な笑みに、疑問ばかり増える。



「男は魔王の力を当てにして願ったんだ、


しかし魔王はもう力を持たず、“次の”魔王次第だと彼に言った」



背筋に何かが駆け上がり、同時に確信めいたものが浮かぶ。



「望みが絶たれ悩む男に提示されたのは、


厄災を封じる人柱になり、同時に世界を潤す魔王となること。


男は………どうしたと思う?」



「魔王になった……?」



そうでしょ……?


と、ミラは思った。

これが勘というものなのだろうか、疑問の中に浮かんだ一つの答え。


ゆっくりとニルの瞼が降りる。



「そう、彼は少ない可能性に賭けて、魔王になる事を選び………死んだよ」




では、今の魔王は……?






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