魔王に捧げる物語
美しさ………と言われてもピンとこない。
同年代の女の子達と一緒にいた事なんてなかった。
話した事さえない、遠くから見た事があるくらいだ。
自分の容姿の事なんて、それこそ考えた事もなかった。
「……わからないよ」
としか言えなかった。
そんな彼女にニルはクツりと笑って続ける。
「焦らなくてもいい、もっともっと綺麗になるよ、誰かみたいに自慢出来るくらいにね………」
「ニルみたいに綺麗な顔の人に言われても、説得力がないわ」
百人が百人とも、手放しで彼の容姿を美しいと言うだろう。
逆に、気に入らないと言う人がいたなら見てみたいものだ。
彼はそう言ったミラに曖昧な笑みを浮かべた。
「人ではないからね。これぐらいじゃないと誰も魔王を慕ったりしないよ」
「………外見だけじゃないよ」
「有難いね、でも俺はミラが思う以上に危険でおぞましい化け物だよ?
力を取り戻す話だけど、それをするには、ミラの大事なものを奪う事になるから」
大切なもの…………??