魔王に捧げる物語
気まずい沈黙を破ったのは意外にも小さなイシュだった。
お茶を用意したと二人に言い、小部屋に案内したのだ。
その部屋はこじんまりとしているものの、
中庭を臨む床から天井まである大きな窓と、
お茶のために誂えたような小さなテーブルがあり二脚の椅子がそれを囲んでいた。
イリスは優雅に椅子に掛け、挑むような目でミラを見る。
あんな風に優雅には振る舞えなくても、負けたくなかった。
イシュはミラが席に着くと、小さな指先で丁寧にお茶を注ぐ。
それが終わると彼は消えた。
イリスがミラを睨みながら先手をとる、
「どういうつもり……?私が誰かわかっているでしょう?」
蔑む口調に、あまり感じた事のなかった怒りを覚えた。
「あなたがどんな身分であっても、わたしには関係ない。
どうして一方的にせめられなきゃいけないの!?」
「当然の結果じゃない、私からあの方を奪おうとしている女に礼儀を尽くす必要がないわ?」
イリスの雰囲気はニルの前とは明らかに違う。