魔王に捧げる物語
「……………」
「ある日を境にほとんどお会いできなかった。たまたまお会い出来たとき、おっしゃったの………。
早く会いたいって………、
窶れた顔だったのに、その時はとても輝いて見えたわ」
「……!!」
「あんなに愛しそうに笑うなんて……本当にその人、あなたが羨ましかった。
私それからとても努力したの、あの方に釣り合う大人になってみせるって」
零れ落ちる涙、震える睫毛………それでも彼女は美しかった。
切ない顔も隠さないその堂々とした様子にやはり彼女は皇女なのだと思った。
そんな芯が強さが羨ましくなる。
「大人になっていろんなことがわかって、試してしまったの………。
でも、そのおかげでよくわかったわ。
住む世界が違うって。
初恋は実らないのね……あなたを見ていて私、自分の不純さがよくわかったわ」