魔王に捧げる物語
そんな事ない、
「そんなことない……わたし、言い合いしたの初めてで、気づけたことあったよ。
嫉妬したのも初めてで、本当の気持ちがよくわかったの!!」
彼女がいなければあの幸せはなかった、試してくれなければわからなかった。
すごく嫌だと思ったけど、今の彼女は違う気がする。
イリスがスッとミラの手を握って穏やかに微笑んだ。
「ありがとう………、あの方があなたを選んだ意味がわかった気がするわ」
「え……?」
意味がよくわからず聞き返そうとしたら、イリスは首を振った。
「もう行きます。
いつか………今よりも幸せな姿を見せてください」
「待って!」
せっかく話せたのに、この人が悪い人じゃないとわかったのに!
いかないで欲しくて呼び止めた。
すると、彼女が止まる。
「………イリスとお呼び下さい。また会えたときは、私も幸せになれると信じております」
「わたしも、ミラって呼んで……?
会えたら話を聞かせて、たくさん!!」
「ええ、ありがとうミラ。
さようなら」