魔王に捧げる物語
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雄大な自然に囲まれた森が広がる樹海の奥には天を衝く山があった。
その山頂は竜が棲むと恐れられている。
人々は魔法が発展した近年でも、最北と最南だけは避けた。
魔力が溢れるこの場所は磁気を狂わせ、天候も安定しない。
何より、この二つの場所に踏み入れた者は帰って来なかったのだ。
そんな山の山頂の城から、ある女性は暇そうに外を眺めていた。
「平和っていいね」
後ろから声をかけられ振り返ると、ここの主がいた。
「カイン………意味深ね?」
女性が振り返ると同時に靡いた長い髪は、城主と同じ白髪で人離れしている。
合った瞳も同じく、紫水晶で楽しげに細められた。
「まさか?私はいつも平和を望んでるさ、エリーは違うと思ってる??」
「ええ、魔王の執着は世界じゃないもの、たまに貴方は狂ってると思うわ…………」
そう言われても、カインはクスクスと笑って彼女を抱きしめた。
「エリアーデ、君には私がいればいいでしょ?
狂っていると思われてもいいけど、面白い話聞かせようと思って………」